No.2

尼崎桝千 天ぷら

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  • 第1回
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グランプリ

贈り物に、今晩のおかずに。かつて漁師町だった街の記憶

江戸時代には中在家や築地で揚げられた「ててかむ鰯」を行商人が売り歩く姿を尼崎でも見ることができたという。新鮮な魚をすり身にして大阪や京都へと出荷するかまぼこ産業が栄えたが、尼崎の練り物文化の系譜を途切れなく受け継ぐのが「尼崎枡千」。安政年間(1854〜1860)創業の老舗の定番は、新鮮な魚のすり身に上質のきくらげがたっぷり入った「白天」だ。きつね色にこんがり揚がった色合いは甘味料ではなく、砂糖をぜいたくに使っている証。小腹の空いた買い物帰りに、得意先への手土産に、献立に困った夕飯の「もう一品」に、これが尼崎のスタンダード。尼崎にかつてええ魚が獲れた海があったというわが街の自慢とともに。